1月28日に、英国議会議事堂(ウェストミンスター宮殿)の委員会室で国際セミナー『英国エネルギー政策:チェルノブイリ事故からの遅い教訓。福島原発事故からの早期警戒』が開催されました。英国の非核自治体協議会(NFLA)、核コンサルティンググループ(NCG)とグリーンクロス・インターナショナル(GCI)の共催です。
菅 はこのセミナーで、今年の3月で5年になる「福島原発事故の真実」について基調講演を行いました。このセミナーには、直前までGCIの創設理事長で元ソ連 大統領のミハイル・ゴルバチョフ氏が参加の予定でした。今年で30年を迎えるチェルノブイリ原発事故のことについて講演する予定が、残念なことに健康上の 問題で断念しました。
この国際セミナーは、UCL(ユニバーシティ・カレッジ・ロンドン)のエネルギー研究所名誉上席研究員でNCG創設者のポール・ドーフマン博士。それとイギ リス・アイルランド非核宣言自治体協議会 (NFLA)事務局長 のショーン・モリス氏が中心になって準備してくれました。
セミナーには、研究者や専門家、メディア関係者、環境NGOメンバーや与党である保守党の議員を含む超党派の国会議員も参加しました。特に英国議会のエネルギー・気候変動委員会委員長、アンガス・マクニール議員(SNP)などからは積極的な質問も出ていました。
司会は下院議員のマーガレット・リッチー議員(SDLP)。リッチー議員の選挙区は、イギリスの有名な核燃料再処理工場群などを持つ原子力施設セラフィール ドの近くです。原発の火災事故や大規模な海洋汚染などを引き起こしたセラフィールドの周辺住民の多くは、原発について警戒心を抱いています。
環境エネルギー政策研究所の飯田哲也さんは、日本の自然エネルギーの発展の可能性について、全国各地で自然エネルギーによる電力会社が設立されていることな どを紹介。「富岡町3・11を語る会」代表の青木淑子さんは、5年が経って福島の被災者が置かれている状況を報告。「帰りたい高齢者と帰れない若い世帯」 の間に心の亀裂が生じていることなどを伝えました。
原子力政策に関する政府の委員などを歴任する専門家のポール・ドーフマン博士は英国の原発事情を紹介。南西部のヒンクリーポイント原発事業が難航している事 例などを挙げて、更なる安全対策や核廃棄物の処理費用などコストが膨らんでいくこと。この原発が稼働する頃には自然エネルギーのコストが大幅に下回ってい るだろうこと。原発にはもう経済的な合理性もなく、ドイツのように自然エネルギーに転換する必要があることを指摘しました。
ドーフマン博士は、ドイツの環境大臣やイギリス労働党のジェラミー・コービン党首たちとも定期的にミーティングを持ちながら、脱原発政策を推進していくことを 約束してくれました。菅は多くの質問が続いた講演会の後に、BBC(英国放送協会)やARD(ドイツ公共放送)など大手メディアからの取材に応じました。
【毎日新聞】2016年2月13日
福島事故後も原発新設を進める英国に変化の兆し?
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