時代に逆行する岸田政権の原発政策

政府が次世代原発の新増設や、最長60年としてきた既存の原発の運転期間延長の検討を始める方針を打ち出しました。原発について、政府はこれまで「新増設は想定していない」としていました。岸田政権は、あの安倍政権や菅(すが)政権さえ手をつけなかった原発政策の大転換に踏み込もうとしています。極めて重大な問題です。

岸田政権は、ロシアのウクライナ侵攻に伴う燃料価格の高騰で電力の安定供給が難しくなっていることや、気候変動問題への関心の高まりから、今なら原発の新増設に国民の理解が得やすいと考えているようですが、全く間違っています。

まず、原発は安全保障上のリスクが大きすぎます。

政府の方針が報じられたのとほぼ同じタイミングで、ロシアが占拠するウクライナのザポリージャ原発への砲撃を受け外部電源が一時的に失われたという、衝撃的なニュースが飛び込んできました。東京電力福島第一原発事故に総理として直面した私にとって、原発が外部電源を失うことの恐怖は、今もまざまざと思い起こされます。数時間でメルトダウンを起こし、大量の放射性物質が放出され、多くの住民の皆さんの生命と暮らしが、長期間にわたって深刻な被害を被ることになるのです。

日本の原発も、テロ行為などによって原発が攻撃を受け、電源を喪失するような事態になれば、想像を絶する大きな被害が生じることを思い起こす必要があります。日本は狭い土地に原発が密集しており、ひとたび事故が起きれば被害は甚大です。

福島原発事故ではさまざまな幸運もあり、幸いにして最悪の事態は免れましたが、今も多くの住民の皆さんが故郷に帰還できずにいます。福島原発事故で発令された「原子力緊急事態宣言」が、事故から11年半が過ぎようとしている今なお解除されていないことを、政治は決して忘れてはいけないのです。

さらに、原発に頼り続けて再生可能エネルギー中心の社会への転換が遅れれば、かえって電力の安定供給に支障をきたすことになります。

政府がどんなに原発の再稼働を進めたくても、地元の同意がなければ進められません。特に東京電力は福島原発事故後も、新潟県の柏崎刈羽原発でテロ対策の不備が発覚するなどさまざまな不祥事を連発しています。簡単に地元の理解が得られるとは、到底思えません。

運転期間の延長にしても、原子力規制委員会の審査を通す必要があり、政府が独断で延長することはできない仕組みです。新増設へのハードルの高さはそれ以上でしょう。

安全性の問題はもちろんですが、これ以上政府が原発に固執し続けていると、電力の国内自給に大きな支障をきたすことになります。エネルギーを輸入に頼る日本は、世界経済や安全保障環境の激変によって、深刻なエネルギー危機に陥りかねません。

気候変動問題を考えれば、火力発電に頼るのにも限界があります。日本は一刻も早く、再生可能エネルギーを中心とした社会に転換すべきです。

福島原発事故後11年が経ち、太陽光発電の全電力に占める割合は、ほぼゼロだった状態から約10%にまで増えました。これまでもたびたび提唱してきましたが、農地に支柱を立てて細い太陽光パネルを隙間を空けて設置し、農業生産と発電を両立させる「営農型太陽光発電」(ソーラーシェアリング)の普及をはじめ、洋上風力発電などさまざまな方法を駆使することによって、日本は国内で使う全電力を再生可能エネルギーを賄うことが可能なのです。私たち立憲民主党は、その道筋を明確に描くことができます。

あとは政治が方向性を示すだけです。時代に逆行した岸田政権のエネルギー政策を、何としても変えさせなければなりません。

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