原発事故で新たな検証報道

東日本大震災と福島原発事故から10年を迎えた現在、事故に対する検証記事やテレビ報道が数多く発表されています。私が当時総理として関与し、詳しく承知していた事柄も多いのですが、船橋洋一氏の「フクシマ戦記上下」(文藝春秋)、麻生幾氏の「その時米軍は『日本占領』に動いた」(文藝春秋4月号)などは、当時の関係者の発言を詳細に再現する貴重な検証であり、私自身も驚かされることが多くあります。

在日米軍は福島原発から放出された放射線量を早い段階から独自で計測し、それに基づいて在日米国人の避難範囲を検討していました。最大で原発から200マイル(約320km)が検討されていたといいます。第七艦隊の母港・横須賀や横田の空軍基地からの避難が必要となる広さです。米軍がここまでの避難を決断すれば、アジアにおける米国の軍事的プレゼンスは大きく低下したでしょう。

NHKEテレ『原発事故“最悪のシナリオ”~そのとき誰が命を懸けるのか~』も衝撃度が高い番組でした。東電の勝俣会長が当時、自衛隊幹部に対し「原子炉の管理を自衛隊に任せる」と発言したというものです。

東電の清水社長は当時、枝野官房長官らに電話で何度も原発からの撤退を申し入れてきましたが、東電は公式にこれを認めず、国会事故調の報告書は「官邸の誤解」としました。しかし今回の報道で、当時の東電本店に原発からの撤退の意思があったことは明確になったのではないでしょうか。

事故から10年を経た今もなお、東電の関係者はメディアの取材にも、政府事故調の調書開示にも、テレビ会議映像音声の全面公開にも応じようとしません。東電の社長ら幹部を呼ぶことができる国会で、新たに分かった事故の検証結果を質して、役割を果たしたいと思います。

忘れることはできません。原発事故はまだ決して終わってはいないのです。

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