危機管理のあり方

新型コロナウイルスの感染拡大を受けて、危機管理のあり方が改めて注目されています。この問題を、9年前の東日本大震災の際の対応と比較する声も、ネットなどで散見されるようになりました。

福島原発事故発生の翌朝、総理だった私は、自ら現場に行って吉田昌郎所長と直接面会しました。ベントの遅れについて東電本店の担当者に問うても理由を説明できず、原発で何が起きているのかを把握できなかったので、専門家である班目春樹原子力安全委員長に同行を求めて現地に向かったのです。

吉田所長は「なぜベントが遅れているのか」という私の問いに「電源がないので手動でベントしようとしているが、近隣の放射線量が上がっており、長時間の作業ができない。最終的には決死隊を作ってでも実行します」と、はっきり言ってくれました。

私の行動は「現場を混乱させた」として、当時強い非難を受けました。しかし、原発の状況を把握できなければ、総理として住民の避難について的確に判断することはできません。私は今でも、あの時に現場の状況を一番分かっている吉田所長に直接会って話を聞けたことは、危機管理の上で大変役立ったと思っています。

当時の経験からも、的確な危機管理のためには正確な情報が必要だと考えます。安倍政権は新型コロナウイルスについて、早急に検査体制を充実させ、感染拡大の状況を正確に把握しなければなりません。その上で、感染症対策の経験ある専門家の意見をしっかり聞き、どう対応すべきかを迅速に判断するよう求めたいと思います。

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