3月20日~26日の1週間、菅直人は招聘されたチューリッヒ・ハンブルグ・ベルリンで開催された脱原発に関する国際会議やイベントなどに参加しました。チューリッヒでは、再生可能エネルギーに関してはスイスを代表する「スイスエネルギー財団(SES)」が3月21日に開催した「Nuclear Phaseout Congress (脱原発会議)2016」で講演しました。2011年の福島原発事故の後、スイスでは新規の原発は建設しないことを法律で決めました。
(写真© Patrick Bussmann/SES)
現在稼働している原発は5基。そのうちベツナウ原発は世界で一番古いで1969年に建設された原発です。スイスの原発は40年を超えるものが多く、老朽化した原発が問題になっていますが、連邦議会は原発の寿命に制限を設けないことを決定しました。そのためこの秋には原発の寿命を45年に制限することなどを目指す国民投票が行われます。会場では、同69年に製造されたドイツ車オペルを展示。エンジンなど技術や車体がいかに古くなって陳腐化しているかをアピール。
菅は、5年が経った福島原発事故の「最悪のシナリオ」では、東京を含む250km圏内5000万人が避難せざるを得ない大惨事の可能性があったことなどを伝えました。会議には隣国フランスや各国から専門家が大集合。福島原発事故当時のアメリカの元NRC(原子力規制委員会)委員長のグレゴリー・ヤツコさん。ドイツ緑の党元環境大臣で2002年の脱原発政策を導入したユルゲン・トリティーンさん。そして首相として2011年の福島原発事故の陣頭指揮を執った菅直人。
この日米独の脱原発を象徴する3人が、原発がいかにリスクもコストも高い時代遅れなものかを力説しました。同時に今年初めて風力発電が原発による発電を上回ったことなどを紹介。この秋に、スイスで行われるエネルギー政策に関する国民投票に向けて議論を脱原発に引っ張りました。会議では、参加した専門家たちからフランスやイギリスのように原発維持を決めている国でも採算が合わないという理由で、原発の新設が難航しているという報告もありました。
スイスの首都ベルン市では、2010年の住民投票によって2039年までに市の所有するエネルギー公社が生産、売買する電力を100%再生可能エネルギーにする法案が可決されたそうです。スイスエネルギー財団は、40年前に脱原発運動を始めたグループが作ったシンクタンク。街頭での抗議集会やデモなどを行ってきた団体が、専門家や政治家など世界のリーダーを集めて国や自治体のエネルギー政策(脱原発政策)に対して政策提言していることに感銘を受けました。
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日時:3月21日 スイス(チューリッヒ)
会議:脱原発国際会議2016
主催:スイスエネルギー財団
Nuclear Phaseout Congress 2016(ドイツ語)
http://www.energiestiftung.ch/service/fachtagungen/fachtagung16/referate/
【Blick】21 March 2016(※スイスを代表するドイツ語紙)
Japans Ex-Premier Naoto Kan über den Super-Gau und Gefahren für die Schweiz(日本の元首相菅直人氏がスイスにおける原発事故のリスクを語る)
http://www.blick.ch/news/wirtschaft/japans-ex-premier-naoto-kan-ueber-den-super-gau-und-gefahren-fuer-die-schweiz-beznau-ist-noch-aelter-als-fukushima-id4830352.html
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