映画『Fukushima50』を見て

福島原発事故で、現場にとどまり事故対応に奮闘した人々を描いた映画『Fukushima50』が、6日に公開されます。憲政記念館で試写会が開かれたので、一足早く見てきました。

よくできた映画だ、と思いました。原発事故のすさまじさや、危険な現場で作業に当たった人たちの勇気と心情がよく表れていました。当時の総理として、吉田昌郎所長をはじめ現場の皆さんには、今でも尊敬と感謝の気持ちでいっぱいです。現場が最後まで頑張ってくれなければ、事故はさらに拡大し、日本が壊滅している可能性があったからです。

同時にそうした「英雄」がいなければ、日本を壊滅させかねない原発それ自体が、やはり人間の制御できないものだと改めて痛感しました。地震と津波は「天災」ですが、原発事故は梅原猛さんの言葉を借りれば「文明災」なのです。

映画では総理が「怒鳴る」場面があります。たしかにあの時、私もずいぶん大声を出した記憶があります。吉田所長が本店に対してテレビ会議で怒鳴る場面もあります。まさに「火事場」だったからです。

あの時は官邸も、東電本店から情報が伝わってこなかったため、意思疎通が十分にできず、私たちも対応に苦慮しました。事故発生から5日目の3月15日、政府と東電の統合対策本部を東電本店内に置いたのもそのためでした。

『Fukushima50』は原発の現場を中心に描写した映画ですが、官邸を中心に描いた『太陽の蓋』という映画もあります。できれば両方を見ていただき、事故当時に何があったのか、さまざまな視点から考えていただきたいと思います。

※事故対応とくに、なぜ福島第一原発にヘリで飛んだか、「海水注入」の真相、なぜ東電本店に乗り込んだか、についてウェブサイト「福島原発事故」特設ページで説明しています。

※私が2011年3月15日早朝に東電本店で話した内容について、映画ではかなり省略されていたので、あの日、私が何を語ったか、ご紹介します。 「今回の事故の重大性は皆さんが一番分かっていると思う。政府と東電がリアルタイムで対策を打つ必要がある。私が本部長、海江田大臣と清水社長が副本部長ということになった。これは2号機だけの話ではない。2号機を放棄すれば、1号機、3号機、4号機から6号機、さらには福島第二のサイト、これらはどうなってしまうのか。これらを放棄した場合、何か月後かには、すべての原発、核廃棄物が崩壊して放射能を発することになる。チェルノブイリの2倍から3倍のものが10基、20基と合わさる。日本の国が成立しなくなる。 何としても、命懸けで、この状況を抑え込まない限りは、撤退して黙って見過ごすことはできない。そんなことをすれば、外国が『自分たちがやる』と言い出しかねない。皆さんは当事者です。命を懸けてください。逃げても逃げ切れない。情報伝達は遅いし、不正確だ。しかも間違っている。皆さん、萎縮しないでくれ。必要な情報を上げてくれ。目の前のこととともに、10時間先、1日先、1週間先を読み、行動することが大切だ。 金がいくらかかっても構わない。東電がやるしかない。日本がつぶれるかもしれない時に撤退はあり得ない。会長、社長も覚悟を決めてくれ。60歳以上が現地へ行けばいい。自分はその覚悟でやる。撤退はあり得ない。撤退したら、東電は必ずつぶれる。」

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