維新政治の最後のキーワード「核武装」は、もはや説明の必要もないでしょう。非核三原則という戦後日本の国是を踏みにじり、日本を戦前のような国家に近づけようとしているのです。憲法を改正し、政府が国会の縛りを受けずに権力を自由に行使できるようにする「緊急事態条項」の新設を求めているのも同じです。戦争への危機をあおり、国民の不安に乗じて戦前の日本に戻そうとするかのような言動を繰り返す維新に、これからの日本を任せることはできません。

ロシアのウクライナ侵攻に怒り、心を痛めている方も多いと思います。維新の創設者の橋下徹氏は、ロシアのウクライナ侵攻を受けて「米国の核兵器を日本の領土内に配備して運用する『核共有』の議論をすべきだ」と発言しました。3月には党として、核共有についての議論を政府に求める提言を、林芳正外相あてに提出しています。

日本は世界で唯一の戦争被爆国です。第二次世界大戦の終結から80年近く、世界が核戦争の悲劇を起こさずにすんだのは、あの広島と長崎の悲惨な経験を繰り返すまいという思いを、全世界がしっかりと共有できていたからだと信じています。国際社会には、被爆国・日本の声にはしっかりと耳を傾けよう、という考えが、今もあるはずなのです。

その当事国である日本が「核共有」などということを口にする。許されることではありません。これまで軍縮外交において、日本の声に耳を傾けてくれていた国際社会も、もはや聞く耳を持たなくなるでしょう。核軍縮に向けた世界の大きな流れにも逆行します。外交的にも大きなマイナスとなる発言であることを理解すべきです。

核と言えばもう一つ、原発についても、維新はとんでもない政策を打ち出しました。日本の原発は現在、原子力規制委員会が求めている「テロ対策設備」が完成しないうちは原発を再稼働してはならない、という方針を打ち出しています。維新はこれを覆し、原発のテロ対策設備が完成しなくても原発の再稼働ができるようにすべきだ、と提言しているのです。

ロシアによるウクライナ侵攻で私が最も衝撃を受けたのは、ロシアがウクライナの「原発を攻撃したこと」です。稼働中の原発が攻撃されれば、11年前に私が総理として直面した東京電力福島第一原発事故以上に甚大な被害が出ることは、火を見るよりも明らかです。維新がどうしてこんな危険な政策を平気で打ち出すことができるのか、意味が分かりません。断じて認めることはできません。

「テロ対策設備が完成していない原発を再稼動させてはならない」という方針は、あの原発事故当時以上に、現実的な課題となりました。テロどころではありません。自ら核兵器を持つ超大国が、隣国を侵攻しているという現実を、私たちは目の当たりにしているのです。そんな時に、それと全く逆行する原発政策を堂々と打ち出す維新に、国の未来を任せることはできません。

「そんなことを言っても、戦争で海外からエネルギーを調達できなくなれば、原発に頼るしかないのではないか」という声もあるかもしれません。しかしそれは、あの原発事故後、再生可能エネルギーによる発電の普及による「エネルギーの地産地消」を、国がしっかりと進めてこなかったことに原因があります。

まず現実を見てほしいのですが、東京電力管内では現在、原発は1基も再稼働していません。にもかかわらず、首都・東京でさえ、電力が足りずに困っていることはありません。また、私が以前から主張していることですが、日本にある約400万ヘクタールの農地の半分で、耕作しながら太陽光発電を行う「営農型太陽光発電」(ソーラーシェアリング)という方法を実施すれば、再生可能エネルギーによる発電だけで、現在の日本の年間電力消費量とほぼ同量の電力を生み出すことが可能です。詳しいことはこちらのページをお読みください。

原発を再稼働させなくても、原発より安価な電力供給は可能なのです。こういう「新しい社会」への展望を示すことなく、原発にしがみつく維新の政治は、もはや時代遅れと言わざるを得ません。エネルギー安全保障の観点からも、今こそ原発ゼロと再生可能エネルギーの普及を進めるべきです。

メニュー