営農型太陽光発電 (ソーラーシェアリング)

ソーラーシェアリングで脱炭素と脱原発の両立を
菅(すが)義偉総理が「2050年までに温室効果ガスの排出を実質ゼロとする(カーボンニュートラル)」という目標を打ち出しました。この目標自体には私も賛同します。しかし残念なのは、総理は目標の実現に向け「原子力や石炭を含め、あらゆる選択肢を追求していく」と述べていることです。自民党内からは「新技術を取り入れた原発の新設も検討することが重要」という声さえ聞こえてきます。
しかし、間もなく発生から10年を迎える福島原発事故に総理として直面した私は、原発の新増設を認めることはできません。世界で最も地震、津波の危険性が高い日本では、安全面、コスト面、使用済み燃料の処理の面からも、原発が主力電源に戻ることはあり得ないからです。「原発を主力電源に戻せる」という幻想から脱し「再生可能エネルギー100%」を目指す政策こそ必要です。
「脱炭素と脱原発は両立しない」という声も聞かれますが、そんなことはありません。太陽光発電と農業を両立させる「ソーラーシェアリング」という方法があります。農地の上に太陽光パネルを設置し、耕作しながら太陽光発電を行う、というものです。
日本には約400万ヘクタールの農地があります。その半分の200万ヘクタールでソーラーシェアリングを実施すれば、再生可能エネルギーによる発電だけで、現在の日本の年間電力消費量とほぼ同量の電力を生み出せる計算です。原発を再稼働させなくても、原発より安価な電力供給は可能なのです。
菅(すが)総理にもぜひ、こうした新しい手法を用いることで「原発を使わないカーボンニュートラル」を目指してほしいと思います。

ソーラーシェアリングとは何か
ソーラーシェアリングとは、農地の上に高さ3メートルほどの架台を設け、細長い太陽光パネルをすのこのように隙間を空けて並べ、耕作しながら太陽光発電を行う、というものです。
太陽光発電というと、多くの方がメガソーラーのような大規模施設を連想されると思いますが、現在は小規模でも実施可能です。ソーラーシェアリングなら、すでにある農地を利用して、耕作を続けながら太陽光発電を始められます。
太陽光発電は技術的には実用化されており、発電コストも原発などより安くなっています。初期投資はかかりますが、発電による収入によって、比較的早い段階で回収できるでしょう。
「ソーラーパネルで日照が遮られ、農作物に悪影響を与えるのでは」という心配の声が聞かれます。しかし、細長いソーラーパネルを間隔を空けて配置するので、農作物の成長に必要な太陽光は、十分に農地まで届きます。むしろ盛夏には、適度な日陰ができることで生育によい影響を与えている例もあるようです。私はソーラーシェアリングを実施している多くの農家を視察していますが、作物の生育に支障が生じたという話を聞いたことはありません。
「農地に支柱を立てると耕運機などが使えなくなり、営農が非効率になる」との声もありました。しかし、支柱の間隔を広くとれば、耕運機で農作業を行うことも十分に可能です。
インターネットなどにはすでに多くの実践例が紹介されています。ご興味のある方はぜひ確認してみてください。

ソーラーシェアリングは農業振興策でもある
私が提唱しているソーラーシェアリングについて「農業をつぶすつもりか」というご意見をいただきました。これは大きな誤解です。
ソーラーシェアリングの実施には、農地のうちソーラーパネルの架台を立てる支柱の部分の土地(面積としてはごくわずかです)を転用する必要がありますが、農地全体を転用するわけではありません。農家の皆さんは、これまで通り耕作を続けながら、同時に太陽光発電を行うことが可能です。農家はこれまでの農業による収入に加え、太陽光で発電した電気を売ることで、新たな収入を得ることができます。
残念ながら現在、農家は農業だけでは十分な収入を得られず、経済的に成り立たないため、耕作放棄地が増えています。ソーラーシェアリングによって農業と太陽光発電を両立させることで、農家の手取り収入が増えれば、農業で生計が立つようになり、農業に戻る人も増えるでしょう。耕作放棄地の再生につながり、ひいては地域活性化にも貢献すると考えます。
「農業をつぶす」というのは全く逆です。むしろ地方においては、エネルギー問題にとどまらない大きな経済効果が得られるのではないかと考えます。
思えば、今から200年ほど前の日本では、農村は食料とともに、薪や炭というエネルギーを都市に供給する役割を果たしていました。その後石炭、石油、原発などがエネルギー源となり、エネルギー供給源としての農村の役割は忘れられてきました。ソーラーシェアリングは「もう一度農村から都市にエネルギーを供給する」という意味合いがあります。再生可能エネルギーは、現代の薪や薪なのです。
立憲民主党は「自然エネルギー立国」を掲げています。ソーラーシェアリングは、まさに自然エネルギー立国を実現する大きな武器になるのではないでしょうか。

<参考>農林水産省「営農型太陽光発電について」

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