今日の一言

原発危機・官邸からの証言


  原発事故当時、内閣官房副長官として官邸で原発事故対応の最前線に立っていた福山哲郎君が、「原発危機・官邸からの証言」という本をちくま新書から出版。


  福山君は後に「福山ノート」と呼ばれる4冊のノートに事故発生当初からの覚書を走り書きで残していた。この本は、当時の事柄が正確に記録された福島ノートの記録の基づいており、まさに「官邸の真実」の記録と言える。多くの方に読んでほしい。

原子力部門の切り離し


  東電が福島事故後、六ヶ所村に多額の寄付を東通原発建設費の名目で支出との報道。東電は原発事故の補償など自力ではできず、国の支援を受けているにもかかわらず、従来の「原子力ムラの主」の姿勢を変えていない。テレビ会議の記録の全面公開を拒否する姿勢も同じだ。東電改革の道筋をつけなくては、電力改革はスタートできない。


  その最初は原子力部門の切り離しだ。民間企業が原発事故に全責任を持つことができないことが、今回証明された。国が「原子力公社」を作り、そこの民間電力会社の原発を買い取ることから始めるべきだ。そうすれば、原発について、電力会社の経営問題と切り離して、国全体の問題として、国民の参加で判断し、廃炉など脱原発に必要な技術開発もここが担うことにすればよい。


  「脱原発」を前向きに進めていく体制づくりは、過去の経緯を見ても電力業界にべったりの自民党には難しい。どうしても民主党政権下で道筋をつけなくてはならない。

二大政党間の政権交代


  二大政党間の政権交代の在り方を考えている。


  戦後、長く自民党政権が続き、1993年に初めて、日本新党、新党さきがけ、社会党、新生党、公明党、民社党、社民連など7党で、「非自民」連立政権を成立させた。しかし、二大政党間の政権交代ではなかった。


  その後、再結集して野党第一党の民主党が生まれ、議席を伸ばし、2009年に自民党政権から民主党政権に交代した。つまり、3年前の政権交代は、戦後初めての二大政党間の政権交代なのだ。 逆に言えば、自民党にとっても3年間の野党は初めての経験だ。


  イギリスでは二大政党間で選挙で政権交代があると、新政権は5年間の任期を務め、5年後に総選挙が行われるのが慣例となっている。野党も5年後に備えて新しいリーダーを選ぶ。


  しかし日本では、政権を攻撃し、一日でも早く倒すのが野党の務めという風潮が強い。そのため、野党時代の私自身の反省も含めて言えば、国会でも「政局」ばかりが重視され、日本として必要な政府の外交活動や政策遂行の足を引っ張るケースも多い。二大政党間の政権交代が成熟していない一例だ。

脱原発法


  国会で脱原発の方針を決める「脱原発法」の動きが活発化している。ロードマップを考える会ではすでに法案を用意しているが、幅広い賛同を得るには国民的な運動が望ましい。今国会中に共通の法案がまとまり、国会に提出できれば、すばらしい。


  社会保障と税の法案が成立した後の最大の政治課題である原発問題に対して、自民党は相変わらずだんまりを決め込んでいる。長年原発推進の立場にあった自民党が3.11の原発事故を経験して、変わるのか、変わらないのか。この点をあいまいにしたまま選挙を戦うことはできない。

最悪のシナリオ


 福島原発事故の過程で、「最悪のシナリオ」について複数の専門家から意見を聞いた。首都圏を含む広範な範囲から3000万人の避難が必要となる可能性が指摘された。

 放射能という見えない敵によって首都圏を含む広範な国土が占領され、日本人3000万人が避難民となることを意味する。住居も職場も失い、東京に集中する政府機関、会社の本社、商業施設、大学や病院などの社会施設がすべて使用できず、社会は大混乱、経済も壊滅的打撃を受ける。故小松左京さんの「日本沈没」に描かれたような国家崩壊に近い状況になったであろう。

 しかし最近の原発議論を見ていると、「最悪のシナリオ」は単なるフィクションであったかのように無視している人が目立つ。

 一人一人の国民が「最悪のシナリオ」がもし現実となっていたら、自分や家族の住居や仕事はどうなったかを考え、そこから原発議論を始める必要があると思う。

現実に目をそむける「現実主義者」


  90歳の母と0歳の孫など家族でお盆休みを取っている。お盆が明けると社会保障と税の一体改革法案成立後の政局が始まる。

 

  私にとって、政権担当時からの2大課題が社会保障と税の一体改革と脱原発であった。一体改革法案が成立したので、これからは脱原発の実現に全力を挙げる。

 

  ドイツなど多くのヨーロッパ諸国では、長年の議論と国民投票を繰り返して、原発に対する方針を決めてきた。しかし我が国では、唯一の被爆国でありながら、原発に対する議論はここ20年余り深まってこなかった。経済発展のためには原発は必要とする電力業界などのキャンペーンが原発議論を抑え込んできたからだ。

 

  「子や孫に原発は残したくない」という思いは多くの国民に共通している。しかし、経済界を中心に「原発ゼロは現実的でない」とするキャンペーンが強まっている。「現実的」とは何か。福島原発事故は67年前の広島、長崎の原爆投下と同じ「現実」の出来事。紙一重で、東日本の広い範囲から人々が避難しなければなくなり、日本経済全体が壊滅的打撃を受ける国家存亡の危機であった。

 

  現実に目をそむける事が「現実的」なる言葉で語られてはならない。

電力業界の新しいビジネスモデル


  民主党内に「エネルギー・環境調査会」が設けられることになった。私にも「顧問」としての参加要請があり、引き受けた。


  最近、電事連を中心に経済界の「脱原発」に反対するキャンペーンが激しくなっている。その論点の中心はゼロシナリオになった場合、国際競争力が低下し、雇用減にもつながる、というもの。



  しかしこの主張はあまりにも一面的だ。まず第一に、福島原発事故が拡大していれば、日本経済は壊滅的打撃を受けたという点を全く無視し、原発事故は起こらないことをすべての前提としている点だ。


  第二に、原子力に代わるエネルギーとして、再生可能エネルギーや省エネルギーへの投資の経済効果を全く無視している点。太陽光や風力などの再生可能エネルギーに対する投資は急増している。再生可能エネルギーは地域分散型なので、地方の雇用拡大にもつながる。

  

  第三に、脱原発に舵を切ったドイツやデンマークが国際競争力が低いとは言えない点。原発のコストは事故への補償や使用済み燃料を長期間隔離する費用などを考えると、再生可能エネルギーに比べても長期的には安いとは言えない。


  電力業界も原発に依存しない新しいビジネスモデルを真剣に考えてほしい。福島原発事故は民間企業が原発について全責任を負うのは不可能であることを証明した。原発を国が作る原発公社に移し、同時に発送電分離を実行し、従来の電力会社は原発以外の発電会社となればよい。そして再生可能エネルギーや地域への熱供給といった分野に進出すればよい。未来に夢の持てるビジネスとなることは間違いない。

あいまいな自民党の原子力政策


 消費税を2014年から引き上げる法案が民主党、自民党、公明党の賛成で成立した。2009年秋、政権交代直後にギリシャ危機が発生し、社会保障と税の一体改革は先送りできないと考え、私の内閣でまず取り組んだ。そして、それを引き継いだ野田総理の、政治生命をかけた取り組みで自公の賛同を得て成立した。この課題で自民党、公明党と意見が一致したことはよかった。


  次の大きな政治課題は原発だ。福島原発事故で、全ての国民は首都圏を含む広範な地域から3000万人の避難が必要となるギリギリの危機を経験した。まさに、国家存亡の危機だった。原発事故を完全に防ぐことは不可能だ。それでも原発を使い続けるのか、それとも脱原発に向かうのか、重大な政策選択だ。


  この問題では民主党と自民党の政策は大きく異なっている。3・11を経験した民主党政権は、私が総理の時に「脱原発依存」に舵を切り、野田内閣もその方針に沿って、脱原発を進める姿勢だ。


  これに対して自民党は原発をどうするのか態度を明確にしていない。自民党は長年政権党として原発を積極的に推進してきた政党であり、本音は「原発維持」だと思われる。しかし、姿勢をあいまいにし、争点にしないで選挙を戦い、政権に返り咲けば原子力を推進するという姿勢は許されない。自民党は明確な原子力政策を国民に示す責任がある。

社会保障と税の一体改革の功労者


  社会保障と税の一体改革法案が成立。最大の功労者はもちろん野田総理と自民、公明両党の党首だが、私にはそれ以上の功労者だと思う人がいる。それは与謝野馨さんだ。


  与謝野さんは日本のため、国民のためには社会保障と税の一体改革がどうしても必要と考えておられた。総理の時、私がお願いしたのに対し、極めて厳しい環境にもかかわらず、社会保障・税一体改革担当大臣を引き受けてくださった。予算委員会などで、古巣の自民党からの激しい非難にも動じず、信念を持って改革案作りに全精力を傾注して下さった。そして昨年6月末、難産の末、成案がまとまり、それが野田内閣での三党合意のベースとなった。


 そしてもう一人の功労者は藤井裕久さんだ。激しい民主党内の議論に対して、「歴史が見ている」と体を張って若手を説得された。


  自民党でも森元総理や尾辻参院副議長など、長老クラスの方が「国民のため」との信念を持って進めてくださった。政局を超えた長老の皆さんの努力に心から敬意を表したい。

原子力の神格化


 経済界の首脳が「原発ゼロはあり得ない」と発言したとの報道。重大原発事故はあり得ないとしてきた原子力の安全神話を信じたうえでの発言か。真意を聞きたいものだ。


  原発依存はここ40年のこと。原子力に頼らないでも多くの国は十分やっていけている。そして世界の経済界も、原発のコストアップによる撤退や再生可能エネルギーなどの分野に重点を移しつつある。日本の経済界の一部に残る、原子力を神格化するような、原子力ムラの呪縛から抜け出してほしい。

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