海水注入と再臨界は無関係


今日の朝日新聞の朝刊に「原発事故調書は語る」という特集が掲載されている。福島原発事故4周年を前にこうした検証記事が掲載されること自体は大いに歓迎だ。ただ、海水注入問題ではこれまでの他のメデイアの報道と同様、誤解を招くような不正確な記述がある。それは再臨界と海水注入を関連させていることだ。


  朝日に記事では「官邸では菅直人首相が、『海水を入れると再臨界しないのか』と疑問を持っていた。」とあるが、これは正確ではない。私はメルトダウンし、メルトスルーした時に格納容器の底にたまった溶融燃料が再臨界を起こす可能性を心配し、班目さんなど専門家のいるその場で尋ねたのだ。冷却のために注入する水が淡水であるか海水であるかは再臨界には全く関係ない。


  実際に現在までの検証結果では、3月12日の夕刻には格納容器の底に溶融燃料が貯まっていたことが分かっている。再臨界の危険性を私に伝えてくれた外部の専門家は「溶融燃料がどんな形になっているかが重要。山盛りのような形だと再臨界の可能性が高くなる。平べったい形だと再臨界の可能性は低い。」と教えてくれた。東海の再臨界事故でも大きな塊状になった核燃料の溶液が再臨界を起こしている。


 つまり、12日の夕刻、政府や東電の原子力の専門家が集まった席で、再臨界の可能性について質問した。班目原子力安全委員長は再臨界の可能性を否定しなかった。12日午後から1号機原子炉の冷却のために淡水注入が行われており、淡水がなくなったら海水に切り替えることは当然で、その場で私を含め誰も異論を唱える者はいなかった。


  原子力の専門家である東電の武黒フェローがなぜ吉田所長に海水注入を停止するように言ったのか、東電内部のコミュニケーションの問題で、私にはいまだにその理由が分からない。吉田所長は武黒フェロー等の停止要請に対して、自らの判断で海水注入を続けたことはよく知られている。正しい判断だった。

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