原発事故の実態


 3月11日東大で、福島原発事故独立検証委員会(民間事故調)を取り仕切った日本再建イニシアテイブ主催の国際シンポジウムが行われた。ヤツコNRC元委員長のほか当時の危機管理官の伊藤哲郎氏、民間事故調の委員長の北沢宏一氏などが討論に参加。興味深く話を聞いた。


  伊藤氏は「地震、津波は阪神淡路大震災や過去の津波などの経験から自衛隊10万人の早期出動など対応は素早く、情報伝達もうまくいった。しかし、原発事故は今回の様な過酷事故に対する備えが官僚組織にも東電にもなく、事故対応の中心となるべき官僚組織である原子力安全・保安院が機能するのに時間がかかり、東電からの情報提供も不十分で、各部署の情報共有がうまくいかなかった。そのために国民との間でも情報共有がスムーズにいかなかった」と感想を述べた。私が当時経験した感想と全く同じだった。


  過酷事故は起こらないとしていたため、原子力安全・保安院の首脳部も、原子力安全委員会の専門家も、事故発生後その事故がどのように展開するかという予測が全くできず、当初、本部長である私に対してどうすべきかという提案はほとんどなされなかった。


  東電の現場である福島第一原子力発電所では格納容器の圧力上昇など直面する事象の対応に追われていた。それは理解できるのだが、そうした現場を支援するべき東電本店に、現場を本格的に支援する本格的な体制が無かったか、全く不十分だった。公開されたテレビ会議を検証してもそうとしか考えられない。


  つまり宇宙飛行でいえば宇宙船でトラブルが発生した時には地上の基地がどのようにそのトラブルを解決するか、それには何が必要かを検討し、現場に提案する。しかし、東電本店には現場と並行して、事故の対応を考えるチームが見当たらず、現場が必要とする機材、例えばバッテリーなどを送ることも下請けに依頼するだけで直接輸送する能力がなく、事故発生から数日間、本店は現場を的確に支援する機能をほとんど果たせなかった。


  事故後、原子力安全・保安院を解体し、原子力事故に対応する中心組織として原子力規制委員会と規制庁を新たに設けた。東電の体制がどのように改革されたかははっきりしない。


  今同じような事故が起きたら的確に対応できると思うかと聞かれることがある。新たな規制庁のメンバーの多くは従来の原子力安全・保安院からの横滑りで、私には原子炉の運転や設計の経験がある実践的な原発の専門家が十分集められているようには見えない。東電の隠ぺい体質も変わったようには見えない。事故に的確に対応できるかと問われれば、疑問だとしか言えない。

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