諫早干拓事業


  ここ数日、国営諫早干拓事業に関する取材が殺到した。私は現在、原発ゼロと再生可能エネルギーに絞って活動しており、それ以外の取材は基本的には断っているが、この件だけは過去の経緯を含めて若い記者に語っている。


  もともとこの諫早干拓事業はコメ不足の戦後間もない1952年ごろ計画されたもので、それが40年後、すでに減反政策が始まっているにもかかわらず、「防災」と名目を変えて工事が始まり、2400億円の巨費を投じて2007年に完成。自民党政権下の無駄な公共事業の典型的なものであった。農林省、特に技官グループにとっては最後の国営干拓事業であり、「コメの増産」から「防災」という農林省の所管でない目的に変えても何が何でも推し進めるという姿勢であった。


  そしてこの干拓事業で大きな漁業被害が出た漁業関係者の訴えに対し、福岡高裁が開門調査を認める判決を出したのが2010年、私が総理の時だった。すでに開門調査の必要性は専門家の会議などでも提案されており、当然の判決と考えて上告をしないという決定をした。


  この時、農水省幹部に、上告をすべきという理由と、上告をしないという理由の二つの案を作り、説明するように求めた。しかし最後まで農水省は「高裁判決には従えないので上告する」という案しか上げてこなかった。最終的に内閣官房で案を取りまとめ、民主党のそれまでの主張に一致していることでもあり、農水大臣から最終的判断を私に一任を受け、「上告断念」を決定した。当時の西岡参院議長は、私を激しく批判したが、それは議長の父上の西岡竹次郎知事の干拓構想であったことが影響していた。


  調査のために海水を調整池に入れることは排水門の操作ででき、技術的には簡単なこと。しかし、農水省にとって海水を調整池に入れることは、巨額の費用をかけて建設した潮受け堤防の存在理由を否定されるということで強く抵抗していると思われる。


  なお、この潮受け堤防の建設でで、有明海の子宮と呼ばれた干潟が永久的になくなり、ムツゴロウなどの多様な生物がいなくなり、潮の流れが変わり、有明海の環境破壊につながっていると、多くの専門家だ指摘している。

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