福島原発事故・総理大臣の責任と職務


   私をはじめ、福島原発事故当時の原子力災害対策本部の責任者として原発事故に対応した政治家3人への告発に対し、「容疑なし」として不起訴が決まった。また東電幹部に対しては「容疑不十分」という理由で不起訴が決まった。


  福島原子力事故は多くの被害をもたらし、まだ終わっていない。その原因も完全には解明されていない。住民の人が関係者を訴える気持ちはよく理解できる。政治家については、私をはじめ事故当時の関係者はもとより、原発政策を進めてきた事故以前の関係者についても、政治的責任が追及されることは、当然だと思う。私自身、政治的責任については真摯に受け止めて、これからの原発ゼロを目指す活動に生かしていきたい。


 東電関係者については政治責任ではなく、福島原発を所有し、運転していた電力事業者としての責任で、政治家とは違う立場だ。さらなる原因究明が必要であり、事故原因を解明したうえで、事業者としての責任を十分果たしていたかどうかが問われることになる。


  もう一点今回の告発に対する対応で注意を払ったのは、行政府の長である総理大臣が職務として判断し行動したことが、検察当局の捜査対象になるのかという憲法上の本質的問題である。もちろん、汚職とか傷害事件のような、正規の職務執行とは言えない違法行為が捜査対象になることは当然だ。しかし、総理大臣という職務上の立場で判断し行動したことが、告発があればすべて捜査の対象となるとなれば、例えば消費税の引き上げとか外交上の判断などまでが捜査の対象となることを意味する。


  この点については何人かの専門家に意見を聞いた。総理大臣の職務上の判断についてまで行政府の一部門である検察が捜査対象として「事情聴取」を認めると、告発されたあらゆる政治的判断が事情聴取の対象になり、「行政権は内閣に属する」(憲法65条)との趣旨を逸脱する。そこで今回の場合には私に対する告発の内容に対しての私の見解は文章で検察官に提出したが、直接検察官と会うことについては前例となるので控えた。

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