東松島みらいとし機構設立総会にて講演


宮城県東松島市が目指す環境未来都市の推進し、震災からの迅速な復興を実現するために、行政と民間を仲立ちする一般社団法人「東松島みらいとし機構」(理事長・大滝精一東北大大学院経済学研究科長)の設立総会が10月24日、東松山市のコミュニティセンターで開催されました。

 

市と市商工会、市社会福祉協議会の3者で構成される本機構は(1)安全で魅力あるまちづくり、(2)地域産業の持続・再生、(3)地域コミュニティーの再興、(4)分散型地域エネルギー自立都市、(5)ソーシャル・ビジネスの人材育成―などの事業を一元的に企画し実行するものです。

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設立総会には、機構の理事や企業担当者、震災後に東松島市を支援してきたデンマークの関係者、機構の相談役となった菅直人前総理、特別顧問となったC.W.ニコル氏、伊勢谷友介氏、機構に参加を表明している企業関係者や市民など約300人が出席しました。

  

機構は、太陽光、バイオマス、風力の地域発電や体験型観光、リハビリ農園などの各事業で雇用を創出し、自然エネルギーで市のエネルギー自給率120%を目指しています。また、アファンの森財団理事長C・Wニコル氏による自然との共生教育プログラムなどで地域全体の心の復興も目指しています。

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 ■菅直人前総理の挨拶【要旨】

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今日はHOPE「東松島未来都市機構」が発足するということで私も喜んでやって参りました。一昨年の3.11の地震、津波そして原発事故は、まさに国難そのものでした。この東松島市におかれても、千名以上の方々が津波の被害によって尊い命を落とされ、多くの住宅が流されるという大変な被害を受けられた訳です。そうした中で多くの方々が、被災地の応援に駆けつけて頂きました。

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私は、今日のこの会に参加する中で二つの大きな絆を感じています。その一つは、震災の後直ぐに、デンマークから皇太子が来日され、東松島にお見舞いに来られたという出来事です。今日もデンマークからヴィリー•ソウンダール大臣、カーステン•ダムスゴー駐日デンマーク大使をはじめ、まるでデンマーク大使館が東松島に引っ越してこられたかのように、多くの皆さんがこの会に参加されています。震災は非常に悲しく厳しい出来事ではありましたが、その中から生まれたこうした国を超えた絆は、未来を目指す大きな力になっていると感じています。あらためて、デンマークからおいでの皆さんに心から感謝申し上げます。

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もう一つは、ここにおられる様々な立場の皆さんとの絆です。私もC.W.ニコルさんとは古いお付き合いになりますが、彼は東松島に森の学校を創ろうと何度も駆けつけています。また、今の若い人々には最も人気のある俳優であり、同時に新しいまちづくり、コミュニティづくりを積極的に進めておられる伊勢谷友介さんにも、この計画に積極的に関わって頂いています。さらに住友林業をはじめ多くの企業の皆さんも、ビジネスということを遥かに超えて、東松島市や未来都市機構がやろうとしている夢を共に実現しようと参加をしておられます。こうして集まっておられる皆さんが、未来に向かって大きな絆を生み出そうしていると感じているところです。

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私も震災発声の時、総理という立場で色々な場面に遭遇しました。しかし、そうした出来事からどのように日本の未来を築いて行くのか。政府としても色んな形で提案をして来ていますが、国がやれることと言うのは、予算を付けたり、制度を変えたりすることは出来ますが、コミュニティをつくると言った仕事は地域の中、自治体の中での自発的な動きがあって初めて、国としてもそれをサポートすることができます。

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先ほど、阿部市長が環境未来都市という称号を内閣府から頂いたというご報告をされましたが、それは市長をはじめとする皆様の積極的な気持ちがあるからこそ、国としても「ぜひそれを実現して欲しい」ということで、予算が組まれたのだと思っております。

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そういった意味で今日のこの未来都市機構のスタートはこの一年半あまりの中で進んで来た色々な絆の広がりが、いよいよ具体的な形をとって実行段階に入って行くことだと思っています。

  

多少私事になりますが、私も10年程前にドイツの黒い森に行き、ニコルさんのアファンの森に行く中で、木材の持つ可能性を強く感じて来ました。日本は約7割を森林に覆われた世界でも恵まれた国です。しかし、日本の木材は7割以上を輸入に頼っています。せっかく日本で育った材木が十分に使われていません。そうした材木を活かして新たな森を創って行く。そうしたことに私も10年程前から色んな方と話し、取り組んで参りました。まさにそうしたコンセプトで新たな街をつくりあげようと言う東松島未来都市機構の仕事に対して、非常に大きな期待を持つ次第です。

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また、エネルギーの問題に関しては、福島原発事故が発生したこともあり、これからのエネルギーをどうして行くのか、日本に限らず、世界のあわゆる国が議論し行動を始めています。今も16万人の皆さんが避難をしておられますが、もう少し事故が拡大していたなら、この東北地方あるいは首都圏も含めた地域から数千万単位の人々が退避をしなければならない事態になりました。そのギリギリのところであったということを私は感じていました。そう考えると、少なくとも世界でも最も地震が多発している日本は、できるなら原発にたよらなくても良い国にしなくてはならない。そしてそれは十分に可能だと考えています。

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私も総理退任後、ドイツ、スペイン、デンマーク、アメリカのエネルギー事情も調べて参りました。特に、今年の1月に東松島の皆さんと共にデンマークを訪問した経験は大変印象深いものでした。風力、太陽光など色々な現場を拝見しました。デンマークには世界でもトップ水準のベスタスという風力発電機を作っているメーカーもあります。

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電気だけでなく熱、特にバイオマスの熱供給に対する可能性も大きなものです。コペンハーゲンでは、80度くらいの温水が各家庭に送られ戻って来るという循環システムがあり、これによって冬の暖房はほぼ賄われていました。その熱は発電所の廃熱や廃棄物などを燃やしたものです。小さな村でも共同のボイラーを炊いて、熱供給をやっていました。我が国で言えば、燃やして捨ててしまう熱を活用している。そうすることによってCO2の排出量を大きく抑制することができる訳です。東松島未来都市構想がやろうとしていることは、こうした先例に学ぶものであり、我が国の未来に向けての大いなる実験でもあります。

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森の学校についても、私の二人の息子は大きくなりましたが、去年、今年と孫が一人ずつできまして、彼らが小学校に行く頃には、コンクリートの塀で囲われた鉄筋コンクリートの校舎ではなくて、皆さんが計画しておられるような、森の中に木造の教室があるそういったところで、育って欲しいと思います。そうした環境を整えることが日本の将来の可能性を生み出すことになると確信しております。

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今回理事長に就任された東北大学の大滝精一先生。やはり人材のネットワークということで言えば、大学の持っている役割は大変大きいと思います。学問の分野の皆様、企業の分野の皆様、そして自治体や私のような政治に関わる者、個人個人の皆さんの参加、そしてデンマークの皆さんとの繋がりが活かされた新たなまちづくりが始まりました。

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東松島未来都市機構が、今日を一つのステップとして大きな成果をあげられることを期待したいと思います。私も相談役という役目を頂きましたので、必要なことがあればお手伝いをさせて頂きたいと思っております。そして3年後か5年後には、こういう町ができたんだということを皆さんと一緒に喜びたいといます。皆様の更なるご協力をお願いして、私の挨拶とさせて頂きます。どうもありがとうございました。

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