畑でつくる太陽光電力「ソーラーシェアリング」


太陽光発電の切り札となるか

自然エネルギーのなかで今、最も注目されているのが太陽光発電。少し前までは発電コストで風力に敵わなかったが、中国など新興国メーカーの参入で急激に価格も安くなり採算性が合うようになって来た。今年7月の「固定価格買取制度」開始で、急激に市場が拡大する可能性があるのも太陽光だ。太陽光発電は他の自然エネルギーに比べ、システムが小さくて済むため誰にでも始められる利点もあるからだ。

 

太陽光発電で最大の課題は設置場所の確保だ。現在の主流は家庭や工場、店舗などの屋根と、広大な敷地に大量の太陽光パネルを並べるメガソーラーだが、この二つだけでは日本の電力の10%が目標というレベルだ。休耕田や耕作放棄地を利用する案もあるが、これらはもともとアクセスの悪い土地が多く根本的な解決策とは言えない。

 

CHO研究所所長の長島彬氏が実証実験を続ける「ソーラーシェアリング」はこうした課題を一掃する可能性を持つ。当研究会では、千葉県市原市で行われている実証実験を取材した。

 

実証実験場に設置されている4.5キロワットの1号機。昨年の大型台風にも耐えた。

ソーラーシェアリングの仕組み

「ソーラーシェアリング」とは、太陽の光を農地の作物と太陽光発電とでシェアする仕組みで、2003年に長島さんが特許を出願。現在では多くの人に使ってもらいたいと無償で公開されている長島氏によれば、植物は一定量の光があれば育ち、それを超える量(光飽和点)の太陽光は植物にとってストレスとなり、成長を阻害する因子となる。多くの植物は「ブナの林の中のような明るい木漏れ日の状態」(長島氏)が望ましいのだそうだ。そこで、生育に必要な分を除いた、余剰の太陽光を発電に使うのがこの仕組みだ。具体的には、農地の上に、足場用の単管パイプを使用してフジ棚のような構造物を設け、四分の一程度の面積になるように、スリット状に太陽光パネルを設置する。実験の結果、収穫に影響はなく、作物によっては収量が増えたと言う。夏の間の水やりも減らすことができるメリットもあるそうだ。設置やメンテナンスも高所で勾配のある屋根よりずっと簡単だ。

 

ソーラーシェアリングの可能性
しかし「ソーラーシェアリング」の最も重要な点は、これが農家の新たな収入源にもなることだ。長島氏によれば、農家が農地1反(約1000平米)あたりで得られる収入は年間6~10万円程度だが、「ソーラーシェアリング」では同じ面積で100万円にもなる。つまり農家は電力料金という安定した収入を得ながら、新しい品種に取り組んだり、経営を多角化することができる。それが可能であれば、農家の後継者不足や自給率低下の解消も夢ではなくなって来る。
農地に太陽光パネルを設置すると農地として認められなくなり税金の優遇策がなくなるのではないかとの不安もあるが、長島氏が国に確認したところ、地面が耕作可能な状態であれば農地と認められ、農地転用の必要もないとのことだ。

太陽光パネルの間隔を変えて、作物の生育状況を観察している。

長島氏の計算によれば、日本で使用される電力量をすべて太陽光発電で賄うには、現在の発電効率で凡そ100万ヘクタール(100キロ四方)の農地が必要で、これをソーラーシェアリング(仮にソーラー1:農地2の割合として)で行うその3倍の面積300万ヘクタールということになる。現在、日本全体の農地は約460万ヘクタール(最盛期は約600万ヘクタールだった)なので、現状の技術でも農地だけで全ての電力を賄える計算だ。

 

この仕組みの良いところは、新たな技術的な課題がないことで、7月の固定価格買取制が実施されれば、農家が1反あたり250万円程度の設置費用を負担または借入できれば直ぐに始められることだ。

 

課題としては、対象が農地であるため、送電線がない場所では新たに設置をする必要があること。国内メーカーの家庭用太陽光パネルは、住宅の屋根での設置を前提としているため農地では保証が受けられないこと(このため、長島氏の実証2号機は中国製のパネルを使用)、また設置のための補助金は屋根に設置することを想定しているため農地は対象にならないことがある。しかし、農業への膨大な補助金を考えれば、農家の自立にもつながるこの仕組みを政策的に進める利点もあるのではないだろうか。自然エネルギーへの転換イメージが具体的に描けることも、この仕組みの魅力と言えるだろう。

行政職員にソーラーシャエアリングを解説する長島氏(中央)。

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